青菜と少食、玄米のパワー/ 自律神経失調症・うつ・不眠症と食生活の関係性~しあわせこよみごはん~

気温の変化とともに環境の変化も多いこの季節、転勤や引越し、会社内での部署の移動、新たな職場や学校生活がはじまり、息をつく暇もなく過ごされた方も多かったのではと思います。

歓送迎会続きで外食も多く自炊する暇も気力もなかったけど、ようやくゴールデンウィークだと内心ホッとするご経験、皆さん心当たりがあるのではないでしょうか。

春は新たな生活の変化が一斉に起こりやすい時期です。楽しいことも多いですが、環境の変化についていくのがやっとで、知らないうちにストレスを溜めてしまっていることもしばしばありますよね。

ゴールデンウィークの大型連休明けになると、いわゆる『五月病』と呼ばれる症状で、心や身体に不調を感じる方が多くいらっしゃいます。

主な症状としては、不安感・無気力・うつ・不眠・食欲不振・焦り・疲労感などが挙げられます。

こうした症状が起きてくると、ストレスを溜めないようにしよう!気分転換をしよう!などと言われますが、元気のない方にとってはそうした言葉も億劫になってしまうことがあります。

心の不調の原因にはたくさんの要素が絡んでいますが、食事を少しずつ整えてみる、というのも実は効果的だったりするのです。

こうした症状は『食生活との関係も大きい』というお話を、自らの経験を交えながら今回お伝えしたいと思います。

コンビニとデパ地下の食事ですませていた日々


私の以前の勤務先は人気のデザイン会社で華があり、やり甲斐のある仕事がたくさんありました。

海外との仕事を主に担当していたため、時差の関係で夜中のメールのやり取りも多く、深夜まで作業が続きます。

そのため平日は自炊することもなく、昼、夜とコンビニやデパ地下でお弁当やお惣菜を買い、時にはカップラーメンなどで済ませてしまう日々。

毎日の仕事はやり甲斐のあるものでしたが、常に疲れていて身体中がだるく重い、身体は少しずつ悲鳴をあげていたのです。

そうした日々を過ごしているとだんだんと気力もなくなり、一緒に暮らしていたパートナーとも疎遠な雰囲気になりはじめ、互いの信頼関係も薄れて別れることとなりました。

それもちょうど冬から春に向かう季節、環境も大きく変わり、とうとう心の不調が訪れはじめたのです。ついには仕事を続けるのも難しい状態となり、別の理由を伝えて退職させてもらいました。

何をするにも億劫で人に会うことが嫌になり、ただ生きているだけの毎日に悲しみを抱き、絶望感に苛まれる毎日。そして一番辛かったのは不眠、全く眠れなかったことです。

夜遅くに布団に入ってもずっと眠ることができず、頭の中はネガティブなことでいっぱい。そうこうしているうちに、明るくなって朝を迎えるという毎日が3年ほど続きました。

もちろん、その3年の間にいろいろ変化もあり、症状が少し良くなったり悪くなったりと一進一退が続いていました。

人に会う時は心配かけないようにと、辛い気分を抑えて必要以上の明るさと笑顔で過ごす事も多く、その後にはどっと疲れが出てしまい動けなくなったりしていたのです。

その頃は自炊をしていましたが、一人暮らしになったこともあり、レトルトやお惣菜を買って済ますこともよくありました。気力がないのであまり凝ったものでなく簡単なもの、ご飯よりは手軽なパンの方に手が伸びていた気がします。

そして、心身的に辛い日々が続く中、幼い頃からの持病だった湿疹が急にひどくなりはじめたのです。

長い間多くの医者に診ていただき、病院で処方された薬やステロイド剤を時々使用したり、有名な漢方の先生の処方薬を数年試したこともありましたが、症状は少しずつ悪くなっていました。

マクロビオティックとの出会い


最初は湿疹を治すために食生活を少し変えてみようかな、と半信半疑ではじめたマクロビオティック。しかし意外なところにも功を奏したのです。

スクールではじめて習ったことに『一物全体』『身土不二』『陰陽調和』の3つがありました。当時の個人的な印象と実践をこちらにそのままシェアしたいと思います。

『一物全体』
食材の全てをいただく。これは皮や根っこなど今まで落としていた部分もいただきましょうということ。

すでにバランスが取れている全体を食べることで、自らのバランスも整えるという考えなのですが、皮も根もいただくならば、なるべく農薬や肥料の入ってないものをいただこうと自然栽培の野菜を中心に摂取しはじめました。穀物はもちろん玄米中心です。

『身土不二』
その土地で採れるものを食べること。露地栽培で採れる旬のものなら、その季節に適したものでもあります。

できるだけ近い場所のものなら輸送にかかるエネルギーも減らせてエコですが、とりあえずは日本産のものなら大丈夫ですよというお話だったので、国産の露地栽培ものを中心に。

『陰陽調和』
これは最初は難しく、よく分からないことも多かったのが本音です。

こうした学びを日々の食生活に取り入れ、また調味料は全て昔ながらの製法で作られた無添加のものを使うことにしたのです。

食生活を変えて一ヶ月ほど経った頃、耳の中にあった湿疹がはじめて綺麗に無くなりました。身体の他の部分にあった湿疹も、薬を使わずに何とか過ごしはじめることが可能になりました。

初めて湿疹の状態が改善したのも嬉しかったのですが、驚いたことにあれだけ苦しんでいた不眠症から解放され、毎晩ぐっすりと寝ている自分がいたのです。

眠れる=身体の修復機能が改善するということになったのか、それまでの疲労感もだんだん薄れていき、生きる気力まで蘇ってきました。

食べるものが自然栽培の穀物や野菜中心であると、そのものの持つエネルギー/生命力が自分の中に取り入れられる。

一物全体ならば、尚更バランスのとれた生命力がある。そして農薬や添加物などが少ない、もしくは入っていないのであれば、解毒する必要性が少ないので、内臓への負担が少なくなる。

内臓の負担が少ないと、身体が休まる時間が増える。効率的にエネルギー転換をすることが可能。疲労感が消えて身体が軽くなると、心も元気になり気力が湧いてくる。

また、生命力のある食べ物は、少しで身体が満足するということもありました。

反対にファストフードのハンバーガーなどは、カロリー的にはかなり高いのですが、私の場合は食べてもなぜか満たされず、ついつい食べ過ぎてしまうような経験がありました。

簡単に説明するとこのような経緯だったと思います。こうして湿疹改善のためにはじめたマクロビオティックで、思いがけず不眠症やうつ状態から抜け出すことができたのです。

玄米の持つ生命力


白米はそのまま漢字にすると『粕(カス)』となるように、栄養バランス的には偏りが多く、玄米の方が栄養バランスは優れていると言われています。

もちろん栄養価も大切なのですが、心の病で悩んでいたあの頃の自分には『生命力』が必要だったのではないでしょうか。

玄米は水に浸けておくと発芽します。品種によって異なりますが、一粒の種籾から大体600〜1000粒ほど収穫できるそうです。昔から一粒万倍と呼ばれるように、一粒の種子が実って何万倍もの収穫があるというお米の生命力。

食べ方や炊き方によってデメリットもあると言われますが、やはり元気のない時に玄米をよくよく噛んでいただくというのは、当時の私にはかなりの効果があったのを実感しました。

自律神経失調症のメカニズム


3年もの間苦しんだ心身の不調は、自律神経失調症からはじまりました。

自律神経には交感神経と副交感神経の2種類があります。この2つのバランスが崩れると不眠や疲労感、不安など様々な症状を引き起こすキッカケとなるのです。

特に、不規則な生活や食事に大きく影響されます。当時の私は夜中までパソコンの前で仕事をし、食事もコンビニやデパ地下の惣菜や弁当などが中心で、食事の時間も仕事の合間のため不規則でした。

通常、交感神経は早朝から夕方にかけて優位となり、血圧や血糖値を高めて心拍数も早くなり緊張状態となります。仕事モードとなりますが、ストレスを感じやすい状態ともいえます。

副交感神経は夕方から未明にかけて優位となり、身体をリラックスさせて消化活動や内臓の働きを促しますし、また睡眠においても重要です。

当時の私が常食していたコンビニ食などは手軽で便利な反面、添加物や化学物質が多く含まれています。

このような食事に加えてスイーツやスナック菓子、お酒や清涼飲料水など陰性の食べ物が多いと、広げる力が働き、血管壁が膨らむことで血管内の空間は狭くなって血圧を上げていきます。

本来、副交感神経が優位に働くはずの夕方以降にこのような食事を摂取していると、緊張状態が続きストレスも感じやすくなってしまいます。

陰性の働きによって胃腸も緩んでしまうことで、消化活動も上手くいかないため循環も悪くなり、体内へのエネルギー補給も損なわれていきます。

また緊張状態にあるために、不眠といった症状もあらわれてきます。交感神経優位の状態が長く続くと、副交感神経も正常に働くことができず、バランスが崩れてしまうのです。

食事の面だけではなく、この2つの神経のバランスをとるためには、自然に沿った生活のリズムを整えることがとても大切です。

理想的には朝日とともに起き、元気に仕事へ出かけて、夜にはリラックス出来るように夕方に仕事を終えて、バランスの良い食事をする。単純なことですが、現代の生活では実現が難しいのも事実です。

あまり無理はしないでストレスを抱え込まずに出来ることを実践していく、そうした意識を保つことが最も大切なのかもしれません。

少食がもたらす効果


最近、断食道場などに行った経験のある方が増えていらっしゃいますね。食べ物を体内に入れず内臓を休ませて過ごすことで、血液の巡りが良くなり体内の修復が進み、脳が活性化するなどの効果があります。

食べ物が常に入ってくる状態では、消化活動にまずエネルギーが費やされ、胃腸などの臓器はフル稼働し続けます。血液もそこへ集まり巡りが悪くなるため、消化は体への負担が多い活動なのです。

ただし完全な断食は、正しい指導のもとに行われないと逆効果であることも多く、特に断食後の回復食(元通りの食生活へ戻すための食事)がうまく出来ず、体調を崩される方もいらっしゃいます。

そこで今回は、日頃から少食を心がけること、または時折一食分を甘酒などに置き換えてみることをオススメしたいと思います。

1ヶ月に1〜2回でも良いですし、疲れがなかなか抜けないと思う時、夕食を食べずに過ごす、もしくはお粥や甘酒のような消化のいいものに変えてみるだけで、内臓が休まり翌日身体も頭も冴えてきます。

同時に湯たんぽや蒟蒻湿布(鍋に蒟蒻と水、多めの塩を入れて、沸騰してから30分ほど茹でた蒟蒻を取り出し、水分を拭いてから2〜3枚のタオルで巻いて患部にあてる)などでお腹を温めてみると、空腹感も和らぎリラックスして過ごすことができます。

それから普段の食事でも、自然に育てられた地元の旬の食材であれば、とれたて新鮮で美味しく栄養価も高いので、少量で満足することが出来ます。

そして、もう一つ大切なのはよく噛むこと。はじめの一口だけで良いのでご飯を100回噛んでみてください。

それだけでも満腹中枢が刺激されて、食べ過ぎ防止にもつながります。こうしたことで少食にすることがより簡単になるかもしれません。

青菜の味わいお浸し


青菜は木のエネルギーの代表的な食材です。芽吹く生命力にあふれ、排泄の力がある食材の代表ですので、この時期に旬の青菜を積極的に摂取してみてください。

特に青菜と柑橘の組み合わせは心と体をスッキリさせてくれるので、氣持ちが塞ぎがちになっている時にはオススメです。

このレシピでは魚などの動物性や脂っこいものを取り過ぎた時に是非取り入れてほしい、消化を助ける食材も多用しています。

【材料】

  • 青菜(小松菜、菜花など) 一束
  • 甘夏など酸味のある柑橘類 半分〜1個(皮をむいて身を取り出しておく)
  • しめじ(石づきを取って、軽く茹でておく) 150g
  • 干し大根(切り干し大根。軽く水で洗い、少量の水で戻す) 10g
  • 乾燥わかめ 小さじ1.5程度(少量の水で戻し、食べやすい大きさに刻む)
  • 薄口醤油 小さじ2
  • 米酢 大さじ1.5
  • 干し椎茸出汁 3/4カップ
  • 煎り黒胡麻 少々

【作り方】
① 青菜はよく洗い、沸騰したお湯に塩を入れたら泡が立たない程度に火を弱めて、ゆっくりと茹でていく。ある程度火が入って柔らかくなったのを手で確認したら、盆ざるにあげて冷ましておく。


② 干し椎茸の出汁と薄口醤油、米酢を合わせてボウルに入れ、その中に茹でたしめじと水で戻した干し大根、わかめを入れて馴染ませる。

③ ①の青菜が冷めたら、軽く絞り食べやすい長さにカットし、②のボウルに入れる。


④ 皮をむいた甘夏などの柑橘をボウルに入れて、2の合わせ液に浸しながら味を全体に馴染ませる。

⑤ 20~30分したら盛り付けて、黒胡麻を指で軽くねじり潰しながらふりかける。

他のメンバーの投稿でもありましたが、この時期は冬に溜め込んだ脂肪が春の暖かさで溶け出し、肝臓がその処理でより活発に働きはじめます。

肝臓への負担を減らすためにも油をできるだけ使用しないメニューを取り入れることは、この時期を軽やかに過ごすヒントでもあるのです。

内臓に負担をかけず過ごす毎日が、個人差はあっても、きっと心の不調の改善にもつながると信じています。赤裸々に語った体験談でしたが、何かの参考にしていただけたら幸いです。

応用レシピでは、上記のポイントを取り入れた青菜(小松菜)のノンオイル・デトックスポタージュをご紹介いたします。

身体へ負担をかけずにリラックス出来るポタージュは、基本の要領さえ押さえてしまえば、旬の食材を使用していくらでも応用の効くレシピです。

【大好評のベジレシピ一覧はこちら】
https://vegewel.com/ja/style/categories/recipe

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大槻広子

大槻広子

KIJ(クシマクロビオティック)公認インストラクター
リマクッキングスクール師範科修了
JAMHA認定 ハーバルセラピスト

都内や横浜のマクロビオティックレストランやオーガニックカフェで経験を積み、現在は自宅サロン「Tsukinoki」で料理教室やイベントの開催したり、個人でパーソナルシェフとして活動中。地域に根づいた自然に寄り添う暮らしを目指しながら、日本の文化を見直すきっかけを「食」を通じて紹介している。