植物性食品・グルテンフリーの日本市場を盛り上げる初の企業向けイベント【食のバリアフリーカンファレンス】

1月15日、食品関連の企業担当者を集めた「食のバリアフリーカンファレンス〜食品メーカーが取り組むべき植物性商品とグルテンフリー商品〜」を開催しました。

Vegewelを運営する株式会社フレンバシーが企画・主催する初の企業向けイベントです。

日本が大きく出遅れてしまっている、植物性商品とグルテンフリー商品の市場。世界的に注目が集まる市場で日本のメーカーはどのような取り組みをしているのか、業界をリードする食品メーカーの担当者が事例を発表しました。

盛りだくさんとなった内容の一部をご紹介します。


会場となった0→1Booster(ゼロワンブースター)は満席となり、この市場に対する関心の高さを感じます。

植物性・グルテンフリーは、海外では開発が進んでいるにも関わらず、日本ではまだまだ商品数も少なく、不便を感じているユーザーが多いのが実情。

今回のカンファレンスは、「成功している企業の実例を紹介してもらい、参入の障壁を少しずつ取り­除きながら、この業界を盛り上げていきたい」という想いのもと実施したものです。

「キリン食生活文化研究所『食卓調査』から見た生活者の食トレンド」


キリン株式会社 ブランド戦略部
キリン食生活文化研究所 シニア・フェロー 太田恵理子氏

10年以上生活者と社会の変化を追い、食の未来について取り組んでいるキリン食生活文化研究所からは、現代の食生活の消費トレンドについてプレゼンテーションがありました。

【ライフスタイルによる食の関心度】

「作れば売れた時代」から「売れるようにしないと売れない時代」になり、同時に食にお金をかける人と節約する人が拮抗するようになりました。

それは、価値観の多様化の表れでもあります。

キリン食生活文化研究所では、「食ライフスタイル」として現代の食生活を10種類に分類しています。

http://www.kirin.co.jp/csv/food-life/think/lifestyle/

ライフスタイルによって、食に対する関心の持ち方には違いがあります。

キリンの調査によると、食にお金をかけるゆとりのある「食セレブ」の間で、オーガニック・グルテンフリー・糖質制限に関心が高いという結果が出ています。

【20代男性に伸びている「ゆるベジ」】

野菜を多く食べていると答える男性は16%、女性は28%となり、全体で緩やかに伸びており、特に20代男性の伸びが目立ちます。

昨年は、「モテる男性は果物や野菜を食べている」、「サラダボウル専門店で男性客が4割を占める」という記事が出て注目を集めていました。

自分を内側から輝かせていきたいという現代の若者像が、今後の食トレンドのキーとなりそうです。

【体験価値が求められる時代】

アメリカから、オーガニックを謳ったスーパーやレストランが、日本に続々と上陸しています。

こうした流れの中で、未だ食のバリアフリーに関心が高くない層を掴むには、食の体験価値による素晴らしさを伝えることが重要です。

作り手との対話や製造体験により、商品の裏にある背景を知ってもらい、価値を高めることが大事になってきます。

また、SNSによって消費者側からの発信が増えてきました。メーカー側は「この商品はこういうものだ」と一方的に発信するのではなく、消費者と一緒に商品を作り上げる余裕を持ち、共創することが重要です。

「Plant Based Food(植物性食品)が拓く未来~人と地球を健康に~」


不二製油グループ本社株式会社 海外事業開発担当部長 稲塚洋一朗氏

なぜ、不二製油が大豆たんぱくを中心とした豆乳チーズや植物性商品を販売するようになったのか。そして、主にアメリカの市場がどうなっているか、データに基づき稲塚氏から解説がありました。

【食料不足に陥る将来に、植物性原料は不可欠】

世界では2050年に人口が98億人に到達すると言われ、動物性原料だけでは食料補給が間に合わず、今後アジアならびにアフリカ・中東地域では食料不­足・水不足になると言われています。さらに、低栄養で病気になる人が増えるとも予測されています。

また、日本でも問題となっているアレルギーは欧米での増加が顕著で、アメリカでは特に乳アレルギーが増えています。

地球環境的に見ても、今までの食生活では地球が破綻する恐れがあり、持続可能な食生活にシフトしていくことが求められています。

【北米における植物性食品の市場の現状と「ミレニアル世代」】

現在、北米の植物性食品全体の売上は31億ドルもあります。そして2054年までに、世界のプロテイン市場の3分­の1が植物性に入れ替わると予測されています。

その背景には、人々の「食を通じた健康志向」の高まりが関係しています。タンパク質の摂取目的は、肥満予防や美の実現、「筋肉美」から「健康美」へと変化しているのです。

また、北米全体の消費者の5%がベジタリアン、そのうちの半分はビーガン。フレキシタリアン(週1回は肉を摂取しない人)はなんと北米全体の消費者の30~40%もいるそうです。

今さら聞けない、ビーガンとベジタリアンの違い!

この数字の中心となっているのが、「ミレニアル世代」です。

1980年代以降に生まれたミレニアル世代は、生まれた時から地球環境について学ぶのが当たり前となっている世代。

健康意識や社会問題への意識が高く、目新しく手軽なものを柔軟に受け入れる彼らにとって、植物性タンパクは親和性が高いものとなっているのです。

こうした時代的な背景から、大手食品メーカーによる植物性食品市場への参入が加速しています。アメリカだけではなく、日本の食品メーカーによる植物性食品会社の買収や投資も増えており、昨年も話題となりました。

ハンバーガーやピザの市場が大きい北米では乳製品市場、特にチーズ市場が魅力的であり、不二製油は豆乳チーズや豆乳クリームを輸出しています。

それらの商品には、不二製油が開発した大豆を低脂肪豆乳と豆乳クリームに分離する、世界初の「USS製法」が使われています。

豆乳チーズは乳製品のチーズ同様に発酵の過程を経ているため、旨味が増していて好評です。

大豆食品は、製造過程でのエネルギー効率が良く、環境にも優しいものです。

また、豊富な栄養源を持つ大豆食品は、中性脂肪の低減やコレステロールの低下といった健康効果も証明されています。

さらに、旨味を強調し、素材の味を引きたてるのも魅力。日本が持っている良いものを伝えていくと同時に、食品メーカーと共に開発を行いながら、地球を健康にしていきたいと思います。

「米粉の魅力~グルテンフリーで拡がる将来性~」


株式会社波里 営業本部 営業推進担当部長 岡田正剛氏

【急成長する米粉利用の背景】

国民一人当たりのお米の年間消費量は、昭和37年度の118 kg をピークに平成27年度には55 kg と半分以下まで減少。

要因として、食の多様化や欧米化によりパンやパスタの消費が増えたことが挙げられます。また、食卓におかずの数が増えたことから、回数だけではなく一回に食べる量も減っていると考えられます。

こうしたお米を取り巻く状況の中、米粉の利用量は6年間で約5倍、23,000 トンまで増え、学校給食では米粉パンの導入校率が69%にまで増えました。

成長した要因は、米粉パンは「美味しい」という、ごく自然な理由だと考えます。


会場で提供された「波里 こまち麺」。つるつるでコシのある麺の食感は、子供から大人まで幅広く支持を集めています。米粉の新しい美味しさを提案できる食品です。

近年、米粉の研究開発が進み、小麦粉とほぼ同程度の微粉砕ができるほどに進化を遂げています。その結果、パンや麺・スイーツなど、米粉は様々な形に姿を変えて市場に出ています。

また、米粉は吸油率が低いため、小麦粉の代わりに代用することで揚げ物のカロリーを抑えることができ、健康志向の高い消費者の心を掴んできていると言えるでしょう。

米粉商品が増えてきた背景には、上記のような技術革新とグルテンフリーブームがあります。

プロテニスプレイヤーのノバク・ジョコビッチが、グルテンフリーの食生活を取り入れパフォーマンスが上がったと公言。出版した本は大きな話題となりました。

波里では米粉薄力粉に「グルテンフリー」の文字表示をしたところ、128%の売り上げ増になり、米粉麺に至っては同様の文字表記で6倍の売上を記録しました。

2020年の東京オリンピックでは、グルテンフリーを取り入れているアスリートや観客が世界中から集まります。その際、米粉がさらに注目を集めることは間違いないでしょう。

今流行りのグルテンフリーとは?パンを食べないダイエット方法?


会場で参加者の皆さんに試食していただいた、波里の米粉を使ったふわふわのシフォンケーキ。お米は米粉になることで、料理でのアレンジが豊富になり、様々な食感を楽しむことができます。

【グルテンフリーから「ノングルテン」へ。拡大を続ける米粉市場。】

グルテンによる不耐症患者は今後増加すると予想され、世界のグルテンフリー食品市場の2017年から2021年の年平均成長率は、11.62%になるだろうと言われています。

欧米でのグルテンフリーの基準はグルテン含有量20ppmです。

日本では、最高水準のタンパク質の定量測定技術を活用し、グルテン含有量1ppm以下の米粉に「ノングルテン」と表示することをガイドラインで公表。国をあげて米粉をアピールしていこうという動きが始まっています。

米粉の利用量は3年後には5万トン、5年後には10万トンに増えると言われています。

グルテンフリー以外でも、アレルギーフリーを謳う製品の多様化や、官民あげての商品普及を通して、より消費者のテーブルに米粉を近づけたいと思います。

そのためにも、原料メーカーとして、食品メーカーと共に商品開発を進めていきます。

「メディアの視点からみる健康志向 Vegewelで見えてきた市場性」


株式会社フレンバシー 代表取締役 播太樹

【「27%」この数字の意味とは。】

Vegewelでは、2017年12月に一般消費者2,407名に対して、「食に関するWebアンケート調査」を実施しました。

この調査において、27%、実に4人に1人以上が「自分もしくは家族に食の制限がある」という結果が出たのです。 これは、我々の予想を上回る数字でした。

ちなみに、過去にアメリカで行われた同様の調査では、60%以上という結果も出ています。

今、日本国内には様々なライフスタイルがあります。外国人居住者、観光客が増え、食のポリシーは多様化。また、昨今の健康志向や環境問題への関心から、食を制限・厳選する人達が増えてきています。

こうした背景から、弊社は食の制限に特化したレストラ­ンガイド「Vegewel」と、ヘルシーなライフスタイルを発信するメディア「Vegewel Style」を立ち上げました。

日本ではまだ遅れている食の制限への理解を広め、「食のバリアフリー」の実現を目指しています。食のバリアフリーとは、食の制限に関係なくみんなで笑って食事ができる文化を日本に創ることです。

お陰様でユーザー数は順調に増加しています。今後もさらに多くのユーザーにサービスを利用していただけるよう、あらゆる種類の食の制限に対応できるプラットフォームを目指して成長していきます。

同じテーブルで、誰もが笑顔で美味しいと食事ができる文化のために、多様な選択肢を。


各社プレゼンテーション後にはネットワーキングの時間が設けられました。

試食として不二製油の豆乳チーズや、波里の米粉を使用したシフォンケーキ・クッキーなどを提供いただき、その美味しさを実際に味わっていただきました。

また、ベジタリアン料理として定番の、豆腐を使った「ベジたまご」も用意し、植物性食品のバリエーションも紹介させて頂きました。


波里の米粉で作ったサクサクのクッキー。キリンからは、「生茶」と「一番搾り」をご提供頂きました。

試食をしながらの意見交換で、時間いっぱい賑わう参加者の方々。

業界をリードする企業の話を聞き、同分野においてイノベーションを起こそうとする皆さんの熱気が感じられた一日となりました。

次回のご案内(3/6)

食のバリアフリーカンファレンスvol.2
「食品メーカーが取り組むべきハラールと代替タンパク」

日時:3月6日19:00〜21:00
会場:外苑前

詳細はこちらから。
https://vegewel.com/ja/style/conference2/

Vegewelでレストラン検索


Vegewelは、ベジタリアン・オーガニック・グルテンフリーなど、あなたの食のライフスタイルに合わせてレストランを検索できるWebサイトです。

食の制限に関係なく、みんなで楽しく食事を囲める環境を日本に創るために、サービスを運営しています。

日本語と英語に対応、ヘルシーなレストランが1000店以上掲載されていますので、ぜひご利用ください!

岩田 絵弥曄 / Emika Iwata

岩田 絵弥曄 / Emika Iwata

ヴィーガンフードアナリスト®︎
ベジタリアン・ビーガン・グルテンフリーなどヘルシーな食のフードライターとして活動。 保育士経験から子供たちの未来を守るため、オーガニックや自然栽培など食の安全にも取り組む。インバウンド対策やアレルギー・環境問題から、ヴィーガンに関するセミナー等も開催。自身も10年以上のヴィーガン。 メディア出演:The Japan Times、日テレ「人生が変わる1分間の深イイ話」、チバテレビ「ジャルっと爆ハリ」等。